お焼香について

お焼香とは?

お焼香とは、一般的には葬儀や法事などで、抹香(まっこう)を使って行う儀式のことをいいます。
抹香とは、シキミの葉や皮を粉末にしたお香です。
お焼香ではこの抹香を手で摘み、熱を持った香炉の中へ落として香りをだします。煙が出ている香炉の方へ手を入れてしまうと火傷をするので、香炉入れの中をしっかり確認し、茶色の粉末香を手に取るように気をつけましょう。

お焼香は、宗派により作法や回数は異なりますが、右手の親指、人差し指、中指の3本の指で香を摘み、香炉の上に落とします。摘まんだ香は低い位置から香炉に落とすと粉が散らばりません。
お焼香で焚かれる香りは、仏教では仏の食べ物と考えられていて、仏と故人のために参列者が順番に香を焚きます。お焼香する人の心と身体の穢れを取り除く意味合いもあります。

お焼香には、立ってお焼香を行う「立礼焼香」や座ってお焼香をする「座礼焼香」があります。自宅や狭い場所で行う場合は、座った状態で香炉を回す「回し焼香」という方法もあります。それぞれの作法については後で詳しく解説します。

通夜や葬儀の場面以外にも、仏壇に線香をあげることもお焼香といいます。棒状の線香と粉上の抹香との違いがあるだけで、意味合いはいずれも同じです。
お焼香は人前に出て行うため、経験したことがないと緊張してしまうかもしれません。
しかし、たとえ経験が少なくても正しい知識を身につけておけば大丈夫。作法もたしかに大事ですが、それ以上に故人を想い弔いの意味を込めることを大切にしましょう。間違ってしまっても心を込めることが大切です。

お焼香の基本的な作法

立礼焼香についての基本的な手順を、具体的に見ていきましょう。
順番が回ってきたら、席を立ち、焼香台のある祭壇の前まで移動します。
このとき祭壇の手前で、遺族とお坊さんに一礼してから焼香台の前まで進むのがマナー。焼香台の前まで来たら、遺影に向かって一礼します。
焼香は、右手の親指と人差し指、中指の3本で抹香を少量つまみます。
抹香を香炉にくべる回数や押しいただきの回数は宗派によって異なります。参列者が多い場合には1回で済ませることもあるので、臨機応変に対応するといいでしょう。焼香を終えたら、遺影に合掌をして一礼をします。
最後に、祭壇から一歩下がり、遺族に対して再度一礼をして自席へ戻ります。

このように、お焼香には何度も一礼をする場面が登場してきます。
お焼香の作法について自信のない方は、どのタイミングで一礼が必要になるのかに着目して記憶しておくと頭に残りやすいでしょう。

お焼香の時の注意点

お焼香の際に気をつけるべきマナーがいくつかあるのでみていきましょう。

まず、お焼香の順番には決まりがあることを頭に入れておきましょう。
故人との関係が深い人が最初にお焼香をします。伴侶や親子が一番深い関係にあたり、その中でも喪主からお焼香を始めるのが一般的です。

葬儀の途中で、僧侶や葬儀社の方から「お焼香をお願いします」という声がかかったら、喪主からお焼香を始めます。次いで席の並び順に親族のお焼香となります。
親族の並び順は、故人との関係が深い人から順番に席次が決まっており、座席順に従ってお焼香が行われます。親族の後に葬儀参列者のお焼香へと進みます。

一般葬儀の場合、参列者には特に並び順は決められていないため、座った順でお焼香をすることになります。
例えば、セレモニーホールで葬儀を行っている場合、係の方が順番を教えてくれるので、緊張せずにお焼香の順番を待ちましょう。

次に、お焼香で抹香を香炉にくべる回数ですが、宗派により異なります。この点については後述します。

最後に、お焼香の作法は、葬儀が行われている宗派(故人の宗派)に合わせるのではなく、自分の宗派の作法に従うのが基本となります。
この点に関しては多くの方が誤解しているのではないでしょうか。お焼香の作法を学ぶということは、自分の宗派について理解することにもつながるのです。
ですから、自分の宗派の作法についても調べておきましょう。

宗派によるお焼香作法の違い

お焼香の作法は、宗派によって異なります。抹香を何回くべるか、額に何回押しいただくかなども宗派によりそれぞれの考えがあり、意味合いが違ってきます。
様々な宗派がありますが、抹香をくべる回数は1〜3回です。

お焼香の回数が1回という宗派の考えは、「一に帰る」という仏教の教えを大切にしています。
お焼香を2回行う宗派は、主香と従香という考えを大切にしており、1回目は故人の成仏を願うため、2回目は1回目の香を絶やさないためにという思いが込められています。
仏教では「3」という数字が重視されていることから、お焼香を3回行う宗派もあります。

お焼香の回数だけではなく、押しいただきの回数についても制限されている宗派があります。
例えば、真言宗の場合、「3」という数字を大事にしています。そのため押しいただきの回数は3回又は1回とされています。
真言宗では、身、口、意の「三業」を清めるという考えがある他、仏、法、僧の「三宝」に香を捧げるという考えや、「三毒の煩悩」をなくしていくという考えも大切にしているようです。
いずれも「3」という数字が関わっていることから、お焼香の回数も3回となっています。
曹洞宗では、お焼香は2回行い、1回目は主香、2回目は従香という2つの意味が込められています。主香では押しいただきをしますが、従香ではしません。
なお、お焼香の時に左手を右手に添えるのが曹洞宗の特徴です。
浄土真宗本願寺派は、お焼香の回数は1回。本願寺派では押しいただきはしません。浄土真宗では、死後は即往生するという考えをもっているからです。
浄土宗や臨済宗は特に決められた回数はありませんが、真心を込めた1回のお焼香や押しいただきが大切にされています。
日蓮宗は、1回のお焼香と押しいただきが多いようです。お寺や地域によって回数の違いがあります。
天台宗のお焼香は1回か3回のどちらかが多く、特に決まりはないようです。